有村架純はついにここまで極めた

 有村架純の演技は、多くは語らずとも、その切なさや奥に秘めた悲しみを表情の演技で伝えるものが多い。これは『前科者』(22)や『コーヒーが冷めないうちに』(18)でもわかるように、彼女が得意なキャラクター造形ではある。一方、有村がそういった役を演じているのはキャリアが軌道に乗ってからでは決してなく、デビューして間もない頃に出演した昼ドラ『ぼくの夏休み』(フジテレビ系、12)まで遡ることになるだけに、まさにここまで極めた、といった感じだ。

 そして、『沈黙のパレード』や『天間荘の三姉妹』など、今年公開作品だけで長編映画に5本も出演していて、最近やたら見かける気がする柴崎コウも、なかなか泣かせる演技だ。陰で夫を支え続けながら、その想いをなかなか口にしないキャラクターだったからこそ、ラストのこれまた“ご都合主義”な展開にさえ、説得力を持たせている。

 さらに脇を固める田中圭や伊藤沙莉といった俳優陣も味わいがあり、これだけぶっ飛んだストーリーでも、役者の演技力でこんなにカバーできるのだと思い知らされた。逆に言えば、今作が物語として成り立っているのは、役者の力が大きいといえるだろう。 

 なかなかのもやもや感は残るものの、総合したら良い作品だったといえるのではないだろうか。役者陣にあっぱれ!

『月の満ち欠け』

■監督: 廣木隆一
■脚本: 橋本裕志
■原作: 佐藤正午ヴぁ ■出演: 大泉洋、有村架純、目黒蓮、柴崎コウ、田中圭、伊藤沙莉、菊池日菜子、丘みつ子、安藤玉恵ほか
■製作:「月の満ち欠け」製作委員会
■配給:松竹株式会社
■公式Twitter:@eiga_tsukimichi


提供・日刊サイゾー

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