直木賞を受賞した佐藤正午の原作を、『ノイズ』や『母性』、『あちらにいる鬼』など、今年公開された作品だけで(今作を含めて)5作目となる廣木隆一が監督。大泉洋、有村架純、目黒蓮、柴崎コウといった豪華俳優陣で映画化した『月の満ち欠け』が、12月2日から公開されている。
全く異なるように思える過去のふたつの物語りが交差し、現在の物語にリンクする特殊な構造であり、まさかそんな設定ではないだろう……と思わせておきながら、そこをどストレートに突き進んでくる様は逆に見事だ。
そんなストーリーでも、ファンタジー要素を感じさせないのは、『そして、バトンは渡された』(2021)や『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)の橋本裕志による脚本力によって、うまく全体がコーティングされているということなのだろう。
大切な人に想いを伝えたい。そんな純粋な気持ちを描いており、共感性の高い作品であることは間違いないのだが、設定の困難さがどうしてもノイズとなってしまう……。観る人がその設定を受け入れられるか、受け入れられないかで、今作の評価は大きく変わってくるだろう。
【ストーリー】
小山内堅(大泉洋)は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と家庭を築き、仕事も順調、どこから見ても順風満帆だった。だが、不慮の事故で梢と娘・瑠璃を同時に失ったことで幸せな日常は一変。深い悲しみに沈む小山内のもとに、三角哲彦と名乗る男(目黒蓮)が訪ねてくる。事故のあった日、小山内の娘・瑠璃が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたという。そして、彼女と同じ名前をもち、自分がかつて愛した“瑠璃”という女性(有村架純)について語りだす。それは数十年の時を超えて明かされる、はかなくも鮮烈な、許されざる恋の物語だった。一見何の関係もない夫婦とかつての恋人たち。その二組をつなぐ、誰も想像もしえなかった数奇で壮大な愛の軌跡とは…… 。