ぶっとんだ設定を豪華役者陣の演技力で見事にカバー

 ネタバレを避けながら語るには非常に難しいのだが、本作はインド映画のような設定の作品でありながら、なかなかぶっ飛んだ設定の物語である。それでいて少し宗教色もあって、「某宗教映画を豪華俳優陣でやってみた!」みたいなノリにも感じられてしまう。

 近年、タイムリープやマルチバースなどの設定が洋画でもそして邦画でも当たり前になってきて、その原理自体が終始説明されないパターンの作品も増えてきたが、今作はまさにそのパターン。

 愛する人と未練を残したまま離ればなれになり、生まれ変わって別人として生活しながらも、その想いが忘れられない――というのは、ロマンチックに聞こえるかもしれないが、現実的にはなかなかカオスな設定にも思えるし、視点を変えればある種のホラーだ。

 ところが、今作の役者陣はさすがといったところで、それなりの作品に仕上げてきている。今作の中では、大泉洋演じる小山内堅が一番観客の視点に近いといえるだろう。

 信じがたい事実に困惑しながら、それを受け入れるというか、受け入れるしかなくなってくる、そんな複雑すぎる父親の心情を見事に演じきっているのだ。