小中「僕の自主映画での監督デビュー作は、中学2年のときに撮った『CLAWS』です。劇中でも触れていますが、スピルバーグの大ヒット作『ジョーズ』(75)に感化された作品でした。サメではなく、熊と戦うという内容です(笑)。8ミリ映画を撮ろうとする少年少女たちを主人公にしたスピルバーグ製作『SUPER 8/スーパーエイト』(11)を観たときは、先にやられてしまったなと思いましたが、僕が観たかったのはエイリアンとの遭遇よりも、自主映画づくりのパートでした。それなら自分で撮ろうと考えたんです」
コダックが販売していた8ミリフィルム「スーパー8」に対し、富士フイルムは「シングル8」を販売していた。色合いを大切にする文芸志向派は「スーパー8」を、特撮志向派は「シングル8」を選ぶことが多かったそうだ。スピルバーグ製作『スーパーエイト』へのアンサーとして、本作のタイトルは『Single8』と命名された。
ルーカスやスピルバーグだけでなく、近年の日本映画からも刺激を受けたと小中監督は語る。『サマーフィルムにのって』(21)や『カメラを止めるな!』(17)などの映画づくりをテーマにした若手監督たちの作品も楽しんだそうだ。
小中「主人公たちが苦労して撮った映画を丸々見せるという『カメラを止めるな!』の大胆な構成は、大いに参考にさせてもらいました。『カメ止め』は最初に劇中映画を見せ、後半でそのメイキングを見せるという構成でしたが、本作は広志たちが撮る『タイム・リバース』の制作過程を見せた上で、最後に完成した作品を丸々見せています。『カメ止め』とは逆の構成にしています。作品づくりの苦労を観客にも体験してもらった上で、観客にも作り手の感覚を味わってもらおうという狙いです」
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