手塚眞や黒沢清らと交流した映研時代

 フィクションである映画にはどこか予見性があり、現実世界では気づかなかったような真実もスクリーンには投影される。スピルバーグ監督の自伝的映画『フェイブルマンズ』(3月3日公開)に通じる部分も感じる。

小中「スピルバーグ監督は憧れの存在です。まだ『フェイブルマンズ』は観ていませんが、8ミリでの自主映画づくりから始まり、商業映画を撮るようになったスピルバーグの人生に、どこか自分も並行して歩んでいるようにも感じているんです」

 情熱に任せて突っ走る広志だが、周囲のサポートによって映画づくりの面白さにも目覚めていく。とりわけ担任の教師・丸山(川久保拓司)の助言「ファーストシーンとラストシーンで、主人公の何が変わったか」は、本作の大きなテーマになっている。

小中「担任教師は何人かのキャラクターを合わせたものです。実際に中学時代の担任だった音楽教師は、僕の監督デビュー作『CLAWS』にピアノ演奏でアバンギャルドな劇伴を付けてくれました。小学生の頃は兄の小中千昭(『ウルトラマンティガ』などの脚本家)と一緒に映画を撮っていたんですが、中学からは別の学校に通うようになり、それぞれ違う映画仲間と交流するようになった時期でもありました。成蹊高校時代の映画研究部には1学年上に手塚眞さんがいましたし、合宿にはOBたちも参加していました。作品のテーマやシナリオの重要性はOBたちがよく語っていました。立教大学ではS.P.P.(セント・ポールズ・プロダクション)という映画サークルに入りました。すでにOBだった黒沢清さんからは『小中が撮る作品は商業映画の劣化コピーだ。8ミリでも商業映画に勝てる戦略を考えなきゃダメだ』と厳しくも温かい批評をいただきました」