◆慧眼の俳優の力技

 もうひと作品、2023年の大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合、毎週日曜日午後8時放送)でも、山田は慧眼の演技力を見せている。

 同作で山田は、松本潤演じる主人公、松平元康(後の徳川家康)を「徳川四天王」のひとりとして支えていくことになる本多忠勝を演じている。これが藍井以上になかなかのくせ者なのだ。桶狭間の戦い直後、元康が身体を休める大樹寺で切腹しようと試みる場面がある。忠勝は、軟弱な元康のことをただひとり、「殿」とは呼ばず、「俺は認めぬ」とかたくなな態度をとる。

 切腹の介錯(編集部注:切腹する武士の苦痛を軽減するため、介助者が背後から首を刀で斬る行為)を引き受ける忠勝だが、彼と対話するうちに元康は思いとどまる。

 筋だけは通そうと介錯を買って出た義理立てもさることながら、結果的に主人の心境を変化させる武勇は、ものの本質を見抜く慧眼の持ち主ゆえだろう。忠勝役を通じて山田もまた役柄の本質を丹念な役作りで演じ込む。まさに慧眼の俳優の力技だと言える。