◆山田裕貴スタイルを確立

 見た目がエキセントリックな藍井は、性格も難あり。司法試験合格者数がすくない底辺ロースクールで貴重な3名の合格者は、すべてが藍井の元から排出されている。通称「藍井塾」では、天才的な分析力で出題傾向を叩き込む無駄のない勉強法を理想とする。

 ここに入塾すると必ず合格できることから、彼はメシア(救世主)と呼ばれてもいるが、学生たちには恐ろしく威圧的な態度でのぞむ。藍井が教室に入った瞬間、学生たちは縮み上がる。教室内の空気を一変させる凄みがあり、山田はそこにいるだけで空間を支配してしまう。

 温和な寄り添い型のスタイルをとる雫によって藍井は、ときにペースを狂わせながら、わずかに愛嬌のある表情をみせたりすることもある。雫が担当する実務演習で藍井は適当な席に座り、ぶっきらぼうに参考書籍を読みふける。誰よりも存在感がすごい。

 心情の変化が見えづらい藍井を演じるにあたって、山田は微妙に強弱付けながら、緩急メリハリある芝居で魅せる山田裕貴スタイルを確立させた感がある。