同時に、赤面疱瘡によって変わっていく日本社会がじわじわと描かれるのだが、新型コロナウイルスによるパンデミックを経験した現在の視点から見ると、既視感を抱く場面が多い。
また「女性が権力の頂点に立つ社会」を思考実験として見せていくのが本作の面白さだが、これが絵空事で終わらないのは、権力の都合で子どもを生むための道具にされて、好きな人との間に子どもが作れない男と女の哀しみがきちんと描かれているからだろう。
この奇想天外なドラマの原作は、よしながふみの同名漫画(白泉社)。深夜ドラマ化され、話題となった『きのう何食べた?』(講談社)の作者としても知られているよしながは、男性同士の恋愛を描いたBL(ボーイズラブ)で高く評価された漫画家だ。この『大奥』も、カッコいい男たちがたくさん出てくる大奥を描きたいという「BL的欲望」が物語の推進力となっている。
2004年から隔月刊誌『MERODY』(白泉社)で連載がスタートした本作は2021年まで掲載された全19巻の超大作となり、国内外の漫画賞、SF賞を受賞し高く評価された。メディア展開は、2010年から12年にかけてTBS系で映画化、ドラマ化が行われたが、当時は連載途中だったため、綱吉編までしか映像化されていなかった。
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