◆この子だけは絶対に産もう、そして夫と離れよう

そこから夫の暴力が始まった。殴っては謝り、妻にすがりついて泣く。だが一度始まった暴力は止めようがなく、エスカレートしていくばかりだった。

「私は実家が遠方で、しかももう両親がいないんです。実家には親戚が住んでいます。ひとりっ子だったし、私は大学時代から東京住まい。戻るところがない。夫から逃げたくても行く当てがない。

夫にぶたれて思わず外に飛び出したけど行く場所もなく、夜の町をさまよったことがあります。私は誰にも必要とされていない。でもそのときお腹に異変を感じて。子どもが蹴ったんです。どんなに暴力をふるわれてもお腹の子は元気でがんばってくれた。この子だけは絶対に産もう、そして夫と離れようと決意しました」

妊娠 胎動
子どもの存在に助けられ、彼女は夫から逃げた。夫の親に連絡し、自身は会社にも相談、話をオープンにして周りの人の協力をあおいだ。親戚が不動産会社を経営している同僚から安心できるアパートを紹介してもらい、別の同僚からの「田舎から送ってきたけどお米、いる?」という申し出に頭を下げた。