絶望の中にも光が見えるような演出は、『護られなかった者たちへ』(2021)でも現実の残酷さを容赦なく描いた、近年の瀬々敬久監督らしいといったところではある。ただ、最後の最後で残念なシーンがあるのは無念だった。
お涙頂戴演出もやり過ぎるとくどいというもので、ラストに、ある俳優が登場し、スピーチをするシーンがある。ネタバレになってしまうから詳しくは伏せるが、1993年のドラマ版にゆかりのある人物だ。
そのシーンが、観客に「最後にもう一度泣け!」と畳み掛けているようで、全体のバランスを崩してしまったのが残念でならなかった。
『ラーゲリより愛を込めて』
原作:辺見じゅん 『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(文春文庫刊)
監督:瀬々敬久
脚本:林民夫
企画プロデュース:平野隆
出演:二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕 ほか
公式サイト: lageri-movie.jp/