二宮といえば、クリントイースト・ウッド監督作品『硫黄島からの手紙』(2006)における、世界的に評価された演技も記憶に新しい。本作も、キャスティングの段階から『硫黄島』がある程度、意識されていたのではないかとも感じられる、ベストキャスティングだった。
【ストーリー】
第二次大戦後の1945年。そこは零下40度の厳冬の世界・シベリア…。わずかな食料での過酷な労働が続く日々。死に逝く者が続出する地獄の強制収容所(ラーゲリ)に、その男・山本幡男は居た。「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます。」絶望する捕虜たちに彼は訴え続けた……。身に覚えのないスパイ容疑でラーゲリに収容された山本は、日本にいる妻・モジミや4人の子どもと一緒に過ごす日々が訪れることを信じ、耐えた。劣悪な環境下では、日本人同士の争いも絶えなかった……。
無念と絶望の中でも、最後まで生きたいと願い続けた男の言葉の重み
おそらく日本映画における予算的な問題だろう。戦闘シーンがほとんどないため、背景に実感が湧かないという点はあった。造形部分での問題はあるものの、それを補うかのように、人間ドラマがとても丁寧に描かれている。
例えば、今作は山本(二宮)と離れ離れになった妻(北川景子)や子どもたちといった、家族側の視点はあまり描かれていない。これも一方的で、映画における視点的には物足りないと感じるほどに、山本と強制収容所(ラーゲリ)の視点が主に描かれている。
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