しかしそれによって、当時実際に収容所にいた人々が、無事であるのか、生活はできているのか、といった家族の状況を把握できない不安感というのを疑似体験させることに成功しているのだ。
そして、唯一の連絡手段であった手紙の大切さ。現代と照らし合わせれば、ただ気持ちを伝えることがこれほどまで難しい環境だったのかと、その残酷さを痛感させられる。そして、一つひとつの言葉の重みを感じずにはいられない。
何より心を揺さぶられるのは、誰よりも生きたいと願い続けた山本が、病に冒され、生きられない、最後に家族と会うことすら叶わない、そしてそれを受け入れないといけないというところだ。病には勝つことができないという残酷な現実は、過去も現在も共通する部分も多く、観ているだけで心を抉られるようだ。
絶望と無念の中でも生きようとした姿、それを見守ることしかできない仲間たちの心境。実話ベースだからこその説得力と、時代の犠牲になった者たちの姿は、見事な反戦メッセージとしても強く機能しているといえるだろう。
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