松本まりかは不安定な役がハマる

 結婚を考えて同棲していた恋人の残像がまだ残る慎一の家に、今はシングルマザーの裕子がいる。しかし、慎一と裕子は恋人ではない。ただの知り合いだ。

 その独特の距離感で、なんとなくあるわだかまり。それが次第に明らかになっていくことで、裕子が慎一の家に住むことになった経緯と、慎一の恋人が家を出た理由がリンクしてくる構造になっており、高田氏による脚本力の強さを思い知らされる。

 無邪気に声をかけ、なついてくるアキラと裕子の姿を見ているうちに、慎一の目には、かつての恋人の残像が時おりダブって映る。

 慎一には子どももいなければ、育てた経験もないが、子どもをひとり置いて、夜遅くに家を留守にする裕子の行動も気になるし、何よりアキラが寂しそうにしていて心配だ。口を出す義理もないし、他人の子どもなのだから関係ないとはいっても、すぐ近くにいる身としては、ほっておくにほっとけない。