NHK男女逆転『大奥』の第6話が放送され、仲里依紗演じる五代将軍、徳川綱吉(女性名、徳子)の慟哭が響き渡った。前話で“当代きっての色狂い”として登場した綱吉だったが、その奥に苦しみを抱えて生きていた。そのことを、NHKが初導入したインティマシー・コーディネーターによって成立した激しい濡れ場が、視聴者に体感させてみせた。

◆綱吉を中心に、グルグルと、大奥の欲望が渦巻く

綱吉を中心に、グルグルと、大奥の欲望が渦巻く
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 父からの愛情を一切知らずに育った三代将軍家光(堀田真由)とは対照的に、綱吉は父親・桂昌院(竜雷太)からの偏愛の呪縛のもとにある。それでも、綱吉は、孟子の「易姓革命」(天子の徳が衰えれば天命も革(あらた)まるをよしとする)を大奥の中で平気で皆に読み聞かせる右衛門佐(山本耕史)に興味を持ち、御台所(本多力)に「私に譲ってもらえぬか」と切り出す。そして右衛門佐は、「大奥に入るまで知らなかったのですが」と付け加えながら、「自分は来年で御褥(おしとね)すべりの35になるのです」と告白して大奥総取締の役を手に入れる。

 第6話でこの後に登場した“生類憐みの令”しかり、本パラレルワールドは、史実を非常にうまく重ねているのだが、実際の大奥の“御褥すべり”は、数え年の30歳だった。現在にも根強く残る女性30歳ボーダーの意識は、こんなところの起因もあるのだろうか?

 御台所の下で言うことを聞いているようでいて、大奥総取締として大奥の権力を掌握していく右衛門佐。当然、桂昌院や側用人の柳沢吉保(倉科カナ)は面白くない。その攻防は、綱吉という目を中心にグルグルと強力に渦巻く台風のようだ。明晰な綱吉には、すべてが見えている。奔放にふるまっているようでいて、非常に冷静。しかし「韓非子」の写本の間違いをきっかけに、新たな側室として桂昌院側が用意したはずの大典侍(一色洋平)と右衛門佐が繋がっていたことに気づくと、「そなたの命など、わたしの心ひとつじゃ」と右衛門佐を、感情露わに気圧した。