◆「魔王」になっていく織田信長
劇中の織田信長は、比叡山延暦寺焼き討ちに代表されるような、悪逆的な行動にも出てしまう。年齢を重ねていき声のトーンも重くなり、狂気に取り憑かれていく、いや人ならざる「魔王」になっていく様を、木村拓哉は本気で憔悴しきっているようにすら見える、全身全霊の演技で表現していた。
そして、予告編でも見られる、クライマックスである本能寺の変で、織田信長から流れる一筋の涙……。ここで「何をやってもキムタク」とは、もう言えなくなるのではないか。
初めこそ情けなく孤独で虚勢を張っていたが、次第に人ならざる魔王となっていき、そして「本当の願い」を知って涙する。木村拓哉が「演じた」というよりも、木村拓哉がその役へ「融合」したかのような、見事な織田信長だった。