◆「虚勢を張っている」印象にもハマる

 加えて、今回の織田信長は「虚勢を張っている」ような印象も重要だった。例えば、映画の序盤で「初夜」を迎える前の男同士の下品な馴れ合いに「ノリきれていない」ように見えるし、綾瀬はるか演じる濃姫への尊大な態度も「仕方なく」やっているようだった。

 その他、劇中の織田信長はけっこう情けない、コミカルな姿も見せる。濃姫の勝気な言い方と渡り合うかと思えば気圧されている場面もあるし、その直後には腕っぷしで負ける始末。獲物を狙う勝負をする場面での「あっ」という気が抜けた声にも笑ってしまうし、その後も濃姫との掛け合いが夫婦漫才のように見えたりもして面白い。

 ちなみに、初夜を迎える場面での織田信長は16歳、濃姫は15歳である。さすがに木村拓哉と綾瀬はるかがその年齢には見えない、というのが正直なところではあるが、それでもお互いの「子供のような言い合い」への説得力は十分で、2人の俳優としての力を最初に思い知らされる場面だった。