東方「米国在住のカミーユは、現代版メアリー・シェリー(『フランケンシュタイン』の原作者)を主人公にした SFジャンルミックス小説『Mary Modern』で2007年にデビューし、『ボーンズ・アンド・オール』は3冊目の小説になります。アイルランドに留学した経験があり、アイルランドの旅行ガイドやセルフヘルプ本なども執筆しています。若者向けの良書を選出するアレックス賞に選ばれた『ボーンズ・アンド・オール』は、脚本家のデビッド・カイガニックが読み、ルカ監督に勧めたそうです。よくぞ見つけ、映画化してくれたなと思います。ちなみにカミーユは、野菜しか食べないヴィーガンだそうです」

 カニバリストが登場する米国小説というと、ジャック・ケッチャムのホラー小説『オフシーズン』、トマス・ハリスの犯罪小説『羊たちの沈黙』などの毒気たっぷりな作品が思い浮かぶ。だが、カミーユが書いた『ボーンズ・アンド・オール』には、主人公たちの成長を描いた青春小説としての魅力が感じられる。

東方「米国の出版界では一時期、アーバンファンタジーと呼ばれるジャンルが流行しました。『トワイライト~初恋~』(08)として映画化された『トライライト』シリーズなどがそうです。『ボーンズ・アンド・オール』もその流れを汲むものですが、ファンタジーどっぷりな世界観ではなく、リアルな青春ものとファンタジーものの中間に位置する作品になっています。そうした独特な立ち位置が、カミーユ作品の特徴かもしれません。映画化が決まって、私も初めて原作小説を読みました。読む前は『カニバリズムの小説か』と身構えたのですが、原作はハードな描写は控えめで、生きることに悩む若者たちの物語として楽しむことができました。映画では、上半身裸のティモシー・シャラメが駐車場に現れるシーンにドキッとしました。彼が主演した『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)の原作小説も私が担当したこともあって、大のティモシー・シャラメ推しなんです(笑)」