◆お決まりの『普遍的な愛』に落とし込まずに踏み出す、愛のかたち

映画エゴイスト
 しかしながらこの映画の本当にすごいところは、それだけでは終わらないことだった。

 話の展開に、原作を知らない多くの人は驚くのではないだろうか。あまりにも過酷すぎる、ドラマすぎる、と。しかしながらこればかりは仕方ない。私も本人から直接うかがったが、事実なのだから。

 私は最初に、『同性愛という枠にとどまらない、普遍的な愛のかたち』みたいに落とし込まれたら嫌だ、というようなことを書いた。しかしこの映画は、最終的にゲイ映画から大きくはみ出してすべてを包み込むような、ささやかだが普遍的な愛のかたちへと踏み出していく。

映画エゴイスト
 ネタバレになるのでここから先の展開や感想は控えておくが、演技経験がほとんど無い阿川佐和子と逆に大ベテランの名優・柄本明が二人とも素晴らしく(この映画、素晴らしい演者しか出てないな)、そして二人がいうセリフ、特に最初はそんなに重要な役柄とは思えなかった、理解のないノンケでもある父親役の柄本明がつぶやく台詞にこの映画の重要なポイントが隠されていることだけを述べておこう。