◆海に向き合う心境

 貴司がメインに描かれたこの週、彼の姿は海にあった。

 海のほうへやる視線。海をまっすぐ見つめるわけではなく、身体を斜に構えて海に対している。会社を辞めて五島に流れ着くようにやってきた貴司はそうして海と自分を見つめようとする。

 貴司が音信不通になって、東大阪の実家では大騒ぎである。母の雪乃(くわばたりえ)は気が気でない。電話が繋がらず全員が彼の無事を祈っていたところ、舞にだけ電話が掛かってくる。貴司は、昔舞からもらった五島の灯台の絵葉書を思い出したという。舞は幼なじみの望月久留美(山下美月)とともに五島へ。

 夕日の灯台。長い階段を駆け上がった先に貴司はいた。駆けつけてきた親友たちを前に、静かに顔を上げた彼は「元気だった」と声を発する。久留美にどうしていたのか聞かれた彼は、手すりにうなだれるように海に向き合う自分の心境をこんなふうに語りだした。

「近くから遠くへどんどん青色が濃くなるのを見てた。海の果てまで見てたら、そっか空がはじまってた。無限の青やで」