不器用だけど、曲げられないものがあって、納得のいくまで作業をしたい。人任せにしたくない。そんな私の居場所はきっと他にあると思い、この決断をしました。自分の直感と違和感に逆らって生きることをやめよう、そう思ったのです。

 この決断を手助けしてくれたきっかけのひとつが、引退報道と同時に発表した、作品『MUSEUM』の制作。ディレクションから参加させて頂いたおかげで、はじめて「自分が納得できるものを世に出せる!」、そんな感覚です。

 時間をかけて絵と向き合うのも久しぶりだったので腰が重たかったけれど、軌道に乗ると、お昼前に筆を取ったのがいつのまにか夜になっていたこともあって。集中しすぎて時間が分からない。日にちが分からない。そんな自分が久しぶりで、嬉しくて、その過程で私は、つくることへの〝好き〟な気持ちを実感できました。

 作業が続いていた時期に、ひと休みがてら、だけど絵のやる気が出るような作品を観たいと思い選んだのが沖田修一監督の『さかなのこ』。魚類の知識の豊富さで幅広く活躍しているさかなクンの自叙伝をもとに描いた作品で、主人公ミー坊役ののんさんを中心に、母親役に井川遥さん、友人に夏帆さん、柳楽優弥さん、磯村勇斗さん、岡山天音さん等、脇を固める役者陣も豪華。終始ほのぼのした空気感が心地良かった。