引退の決意をする大きなきっかけはありましたが、それまでにも、ここ数年自分と向き合う出来事が多く重なっていて、なにか歯車が噛み合っていないような感覚がありました。

 本当はずっと前から違和感を感じていたはずなのに、その自分の感覚を無視して蓋をして「いつかこの仕事をしている自分を肯定できるようなきっかけに出会えるはず!」という、根拠のない希望に縋っていたような気がします。そんな私を正しい道に導いてくれるように、色々な出来事が度重なっていたのかなと。

 引退すると事務所に話して正式に決まった後。少しは後悔するかと思ったけれど、びっくりするほど、その違和感がするする解けていくような感覚が心地良くて、後悔は全くなくて。

 それは、多分私なりに、私の本当の〝好き〟を見つけることができたから。お芝居の表現の場所が苦しいなら、私に合った表現の場所で、自分の〝好き〟を追究すれば良いのではないか、と思えたから。