事前情報で映画『ゴースト/ニューヨークの幻』を思わせる設定の幽霊譚だと知った時は、どうなるものかと不安だったが「幽霊になった男×幽霊が見えない女×幽霊が見える男」という面白いシチュエーションを作り出せた時点で、まずは成功だったと言えるだろう。
また、タイトルにある「100万回」とは、劇中に登場する佐野洋子の絵本『100万回生きたねこ』(講談社)から取られたものだろう。おそらく、絵本に登場する100万回生まれ変わった末に愛する人と出会う猫と、幽霊となった直木が悠依を見守る姿を重ねているのではないかと思う。
そんな直木と悠依のラブストーリーと同時進行で描かれるのが、魚住が捜査するマンションで女性が殺された殺人事件の謎だ。事件当日、直木はマンションの監視カメラに映っており、事件に関わっているのではないかと疑われていた。
本作は、表向きは現代の幽霊譚というファンタジーテイストのラブストーリーだが、背後で蠢く殺人事件や節々に挟み込まれる現代の子どもたちが直面する過酷な現実の描写は、とてもシリアスである。
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