◆「目覚め」「気づき」の強要

「まずはじめに、ビタミン剤のナイアシンを大量に飲みます。それで体が赤くなると、悪い反応だと言われ、大量の複合ビタミン剤を飲み5時間サウナに入りつづけます。これを、赤い反応が出なくなるまでくり返さなくてはなりません。いま思うと、こんなことを真面目にやっていたなんて、馬鹿らしくて笑えてくるのですが」

笑えるというか、5時間のサウナは血圧や脱水が心配になる。ナイアシンは、ビタミンB群のひとつで、血管を開く作用があるため、高確率で肌は赤くなる(「ナイアシンフラッシュ」と呼ばれている)。要は、よくある反応だ。

「肌の赤みに加え、何か精神的な体験……目覚めや気づきのようなものを得られないと、このプログラムから開放されません。体がつらいだけでなく、有料なのでお金もかかりつづける。そこでみんな、何かしらの体験を自分で無理やりこじつけるんですよね。私の場合は『視界がクリアになった!』です。単純に、道に迷って細い路地をさまよった末に、広い道に出て景色が開けたような感覚があっただけなんですが。それを神秘体験と解釈し、目の前が開けるような感動的な体験! という話に無理やり落とし込み、そのプログラムのクリアをもぎとりました」