そのリチウムの多くは南米大陸にある。チリ北東部、アルゼンチン北西部、ボリビア南西部にまたがる地域は塩湖が点在し「リチウム・トライアングル」と言われる。米国地質研究所(USGS)によると、世界のリチウム地下資源量の約67%が「リチウム・トライアングル」に眠っているという。

「リチウム・トライアングル」のうち、チリとアルゼンチンはリチウム生産がほぼ軌道に乗り、チリは生産量で世界2位、アルゼンチンは同4位の地位にある。資源量からすると両国の生産量は、今後も大幅に増加することが予想されている。

 その一方で、ボリビアだけは商業生産ができていない。国別の資源量では世界トップ、全世界の約4分の1のリチウムが眠っているのに、である。世界最大の塩湖として知られるウユニ塩湖などは、チリやアルゼンチンの塩湖よりも標高が高い位置にあることなどから、採掘に高度な技術が必要だ。にもかかわらず、ボリビアは政情不安が続くため外国企業が定着できず、リチウム開発の技術がない。このためボリビアは現在も「リチウム界の眠れる獅子」のままだ。

 ボリビア政府としてはリチウム価格が高騰する中で、その恩恵を受けられない状態を早急に打破しなければならない。提携先に手を挙げた米国、アルゼンチン、ロシア、中国の企業の選考を1年以上続けてきたが、反米左派のカリスマ、モラレス元大統領の「子飼い」であるアルセ政権が提携先を中国の企業グループに決めたのは、自然の流れであった。