ーーそういう文句は、監督の立場だと、より公には言えないですよね。

清水 ライターやコメンテーター、ましてや映画監督や俳優は、あまりネガティブなことを口にはできませんよ。もちろん僕もそうで、同業者や先輩や後輩、同期の監督やプロデューサーもいるから、個人的には「これはひどい!」と思っても、言えないということは業界にいる人ほどあります。かと言って、監督に良いも悪いも含めて直接言ってくれるのは、とても貴重ですから、そういう人がいなくなってほしくないという気持ちもあるんです。

ーー監督はショックを受けることもあっても、批判の声も受け入れるのですね。

清水 何しろ妻なんて、最初は「清水さんの映画、何回観てもつまんなくて寝ちゃうんだよね」という悪口から始まって、「この人面白いな」と興味が湧いたことが最初のきっかけですよ。でも、いざ結婚してパートナーになっちゃうと、遠慮もするし、そもそも作品に興味を持ってくれなかったりする。でも、それも、なんとなくわかるんですよ。

 監督という立場は、どうしても遠慮されちゃうし、率直な感想を言ってくれる人はいない。それは出演してくれた役者でも。まぁ、そりゃ正直に「あなたのこんな映画に出たくなかった」とは言えないですよね。言ってくれたら悔しいけど「じゃあ次は絶対にキャスティングして、次は出て良かったと思えるようにしてやろう」というモチベーションは生まれますけどね。もちろん、そこまで言ってくれる人なんて、ほとんどいないのですけどね。