ーーやはりネガティブではない、観客からの率直な意見は嬉しいですよね。

清水 でも、僕の映画に限らなくても、「ちゃんと観てよ!」と言いたくなることもありますよ。先にもあげた『ミッドサマー』では「今年イチ気持ち悪い映画だった」という単純すぎる感想を知人の女優さんから聞いた時は「あの映画の価値を何にもわかっていない!」と思ったし、『パラサイト 半地下の家族』では「え~○○だけで○○?(クライマックスのネタバレにつき伏せ字)」という一般客女性の声を劇場で聞いて「今まで何を観てたんだ!?」などと、その鑑賞眼というか映画偏差値の低さにがっかりしました。……が、感想や印象はホント人それぞれだし、それでいいはずなので、こう感じた! という人にアレコレ訴える程、野暮なことはしたくないし、自分が作り手だからこそ、何も言えませんしね(笑)。

ーーそれは映画の内容は受け止めているけど、本質を上手く言語化できていないだけかもしれませんよ。

清水 お客さんの感想を捻じ曲げてまで、あれこれ言う立場でもないんですよね。こう言ってみて、改めて作り手の自分は、正直すぎる評論はできないし、しないほうがいいと思いました。

ーーその他で、ホラー映画を観る観客に思うことはありますか。

清水 日本人で特に思うのは、良くも悪くも「こんなに行儀のいい観客はいない」ということですね。読めない言語のエンドクレジットまでちゃんと観たりするんですから。でも、笑ってもいいところに声出しちゃったとか、怖くて「ギャっ」と言っちゃったかと、そういうのを気にせずに、ありのままに笑ったり、叫んだりしていい、自分の感情を人前で恥ずかしがらずに出せばいいじゃんと思いますね。そのくせ、こんなに行儀のいい国民に向けて過剰なまでに劇場でのマナーのお知らせもありますから。山田洋次監督も同じこと言ってましたよ。「映画を観て存分に笑って泣いてほしいのに、どうしてあんなにマナーばかり気にするんだ」って。