ーーホラー映画を手がける上で、これだけは大切にしたいということはありますか。

清水 ハリウッドのホラー映画では、何者かの視線が近づいてくる……! 近づいてくる……! ダーン! と大きな音が鳴るけど、振り向いたら友達でしたっていうサプライズのパターンがありますよね。それを観ると僕は「いやいや友達だったらもうちょっと、遠くから声をかけろよ!」ってと突っ込んでしまうんです。それも含めての面白さとも言えますが、正直それはどんな監督でもできる演出なんですよ。もう流石にその手の古臭くチープな演出は、なるべく避けたいと思っています。

ーーそういうのをホラーでは「ジャンプスケア」って言いますよね。確かに、清水崇監督作では、ジャンプスケアはほとんどないように思います。

清水 苦手なんですよね。「やってくれ、やってくれ」と制作側には言われるんですけど。恥ずかしくてできません。でも、そういうのを一般のお客さんは求めるんですよね。わかりやすい「ああ、びっくりした」っていうのを。それは怖さじゃなくて、僕にとってはただの「驚かし」なんです。

 でも、もちろん観る側のせいにだけはできません。びっくりして、思わず「ぎゃあ」って叫んだことで、エンタメとしては高揚感も得られますから。ただそもそも、僕個人がそういうのがなくて、むしろ笑っちゃうし、ツッコんだり、冷めちゃったりするんです。一方で、そう要望してくるプロデューサーの言い分もわかるし、作り手も「こういうものが求められているんだよなあ」と認識して研究しなきゃいけないし、やはり期待にはある程度は応えないといけない……。それでも、その通りにお客さんに媚びたくはない。そんなジレンマがありますね。