ーー『牛首村』では「あれっ何か映ってた?」「いまの何?」という演出があり、それでこその、じわじわとくる怖さがありました。やはりホラーでは、お化け屋敷的なエンターテインメントが求められるということなのでしょうか。

清水 社会派を気取るわけじゃないですけど、メッセージとかテーマとかを、ホラー映画ならではのドラマ中に組み込んだりはしているつもりです。

ーーホラーという枠組みの中に、社会的なメッセージを込められたら、それは素晴らしいことだとは思います。

清水 テーマを込めたら込めたで、作り手が語っちゃうと、恥ずかしい部分もありますけどね。やはり、今のホラーの評価軸は、怖いか否か。もちろんそれも大事なことなんですが、それだけでない面でも観ていただけるよう精進します。

ーー「こういう日本のホラー映画が観たい!」という監督の希望はありますか?

清水 『ミッドサマー』や『LAMB/ラム』や『MEN』といった不可思議な、「一般の人に届くの?」と思うような路線の作品が、ホラー以外のジャンルでもいいので、もっと日本でも出てくるといいですよね。ジャンル分けは「ホラーですよ」「SFですよ」「キラキラした恋愛ものですよ」と、観たい人に観やすくするためにつけられているわけですけど、そうじゃない「これどうやって位置付ければいいんだ」「気味悪いけど面白い」という映画があってもいい。例えば、『ゲット・アウト』や『NOPE/ノープ』のジョーダン・ピール監督作がそうですよね。

 そういう意味では『きさらぎ駅』『N号棟』『“それ”がいる森』あたりはその路線に近づいているのかもしれないけど、邦画業界ではまだ、なかなか走りきれていません。おそらく、もっとわかりやすいものじゃないと、企画が通りづらいんでしょうね。