最初は僕も、Kōkiさんについて、モデルやってるというくらいのことしか知らなかったので、プロデューサーから話を聞いた時は「いやいやいや……無理でしょ、未経験で主演は……」と言ったんですよ。そうしたら「その気持ちはわかります。じゃあ1回、会ってみませんか」と言われて、会って少し話しただけで、その目つきと言動と物腰で“この子は、単なる18歳じゃない”と低姿勢の内に秘めた勢いと情熱を感じられ「この子だったらやります、一緒にやりたいです」と思いました。ただ演技のコーチにレッスンは受けてもらいたい、と幾つか条件は出した上で。
撮影に入るとKōkiさんは、周りのベテラン俳優たちが引くくらい、テストの時から全部本気でした。「全て本息だと保たなくなるから、本番まで演技はおさえておいていいから」とこっちから言っても、「私は初めてだから、こうしかやり方がわからないんです。全力でやるしかないから、すみません」と返される。器用では無いですが、人一倍全力投球でした。そういう姿を観ているから、寄り添って、一緒に作り上げたいと思いましたね。
単純な「驚かし」はしたくない
ーーところで、ホラー映画がVODなど時代の潮流に乗っている印象はありますか。
清水 手頃で観易い分、劇場でまで観なかったホラーでもこっそり観てみるか……ってのはああるかもしれませんね。それはレンタルビデオが普及した時にもあった事ですが、ちょっと人目を忍んで……的な見易さも影響していますよね。こういう変革時期には、必ずホラーやエロは注目されるんです。
ただ、作る側は映画館での画調や音響設備を想定しているので、出来れば劇場で観て欲しいってのはあります。手頃なスマホやタブレット、家庭用モニターでは全く音響も画も違うので。それから、A24の作品群やアジア圏のホラー系の台頭で少しずつ変わりつつはありますが、結局はワーキャーと騒がれる“脅かし”や“刺激”イコール怖い、それがホラー映画だと思われている。そもそも、ホラー映画と聞いた途端に苦手な人はたいてい、“血みどろで残酷に人が死ぬ、ドラマ性のない映画”だと勝手に思われてしまって観ないようです。ホラー映画が好きな人は好きな人で、そこにドラマを求めない。いかに怖いかどうかだけが評価軸で、選び易くするためのジャンル分けが結局は、観客層を狭めているという悪循環があると思いますね。