◆親の離婚で不安定な心に入り込む

「母がやっているエステサロンに、本を置いてくれないかという営業が来たのが、その教団を知るきっかけでした。当時はもちろん、新興宗教団体だという認識はありません」

その時Kさんは高校生。両親は離婚して、母親とふたりで暮らしていた。親の離婚によって生活環境が変わり、周囲のゴタゴタに疲れて、人生について深く考えるようになっていったという。

「自然とスピリチュアルや精神世界に興味を持ち始めました。そんなタイミングで、私のようなつらい体験によるトラウマを取り除く技術を、唯一持っている団体だと聞かされ、本を買い始めたんですよね。これがすべての始まりです」

Kさんはその団体を新興宗教だという認識もなく、ましてやカルトだとは知る由もない。カウンセリングや自己啓発、コーチング、ライトな秘密結社、人生哲学。いわゆる伝統的宗教のそれとは違う雰囲気があり、とっつきやすさもあったようだ。

本を買い求め愛読しながら、Kさんは大学へ進学。しかし、大学生活はどこか物足りなかった。「大学でやりたいことが見つからない」。これはめずらしくない悩みだろう。そこから趣味やサークル、バイトに熱中していく人も多い。一方Kさんの場合は、教団と関わりを持っていたことから、幹部のひとりがビジネススクールを新設するという情報を手にいれた。人生の分岐点だ。