誤解(6) 「相続時精算課税制度を選択したので、その後長男に1万円を贈与しても申告は不要」
相続時精算課税制度は、将来値上がりする可能性のある財産を贈与する場合に節税対策になるとして注目を集めている。理由は、相続時の時価が高かったとしても贈与時の時価がそれより低ければ、最終的に相続時に精算した際、負担するのは低いほうの時価に対する税金になるからだ。加えて2,500万円という非課税枠もメリットが大きい。
反面、暦年課税制度と違い、「贈与者は60歳以上の祖父母または父母、受贈者は20歳以上の子又は孫に限る」といった厳格な制限がある。さらに、いったん相続時精算課税制度を選択した当事者間では二度と暦年課税は選択できない。ということは、「たとえ贈与する金額がたった1万円でも、相続時精算課税制度の対象となる」ということなのだ。
「お小遣いのつもりで1万円の贈与」でも、いったん相続時精算課税制度を選択したなら、贈与をした年分については必ず贈与税の申告をしなくてはならない。
誤解(7) 「孫もいるが、相続人候補は子なので子のみに生前贈与した」
「税金対策としての生前贈与」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのが相続人候補である子だ。もっとも身近で、かつ一家を担う中心として日々苦労している子の姿を目の当たりにしているからこそ、子を対象に贈与をイメージするのは自然なことだろう。
ただし、子への生前贈与が必ずしも相続対策として有効かといえばそうでもない。理由は2つ。1つは先述した「相続開始時以前3年間の生前贈与が相続財産に加算される」ため、もう1つは二次相続、三次相続による資産の目減りと対策の手間のためだ。
少子高齢化となっている現在、財産の持ち主が70代~90代の高齢者、子が40~60代、孫が20~30代という世帯も少なくない。財産の持ち主が亡くなれば、まず子に財産が承継されて一時相続が発生する。ここで終われば「生前贈与が税金対策になったね」で締めくくれるが、この後、必ず子が被相続人となる二次相続が発生する。
そうすると、最初の被相続人から受け取った贈与財産を含めて再度税金対策を検討しなくてはならない。対策をしなかった場合には、二次相続で相続税が課されることになる。前の相続から10年以内の相続の場合には相次相続控除により一定額が相続税額から控除されるものの、税金だけでなく相続そのものの手間は生きている人間にとってかなりの負担となる。ならば、できるだけ税金も手間も減らしたい。そこでポイントとなるのが世代を飛び越した孫への生前贈与だ。
孫への生前贈与を上手に活用すれば、少なくとも次とその次の相続にかかる税金と手間を減らすことができる。また、まだ若い孫が将来子どもを持ったとしても、時間をかけて計画的に相続や税金の対策を練ることもできる。長い目で見れば、前の世代の財産と配慮が、後の世代の幸せを後押しすることになる。少子高齢化かつ長寿化している現代だからこそ、孫への生前贈与はぜひ有効活用しよう。
文・鈴木 まゆ子(税理士、ライター)/ZUU online
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