現在は9階までが売り場で、10階はオフィススペース、11階はルーフトップという構造だが、最近は特売品を売ることが多くなった9階フロアを売り場から切り離す。5thアベニュー沿いのデパートの入口とは別に、49thストリート側にカジノ専用の出入口を設け、赤い絨毯を敷き詰める。

 ニューヨークタイムズは、サックス・フィフス・アベニューを所有するハドソンズ・ベイ社が作成した完成予想図を「1960年代のスタイリッシュなスパイ映画を彷彿とさせるシャンデリアの下に座る上品に着こなした都会人や、戦前の石造りの建物の屋上での月明りに照らされた夜会が描かれている」と表現した。

 サックス・フィフス・アベニューの店内からは、向かいのロックフェラーセンターが一望できる。ロックフェラーセンターといえば、クリスマスシーズンに巨大なクリスマスツリーを設置することで知られている。カジノ設置が実現すれば、この場所は世界で最も有名なクリスマスツリーを見ながらカジノに興じることができる、世界的にも特別な場所になる。

 ハドソンズ・ベイ社がサックス・フィフス・アベニューの旗艦店の一部をカジノにしようとしている背景には、百貨店の衰退がある。米国では2018年10月に、かつて小売業で全米を席巻したシアーズが経営破綻した。20年8月には米国最古の百貨店、ロード・アンド・テイラー(1826年創業)が破綻し、看板を降ろした。