人生100年時代と言われ、定年後の生活は30年以上になるかもしれません。どのような暮らしをするか考えたり、家族で話し合ったりしたことはありますか?まだ先のことと考えて、いざという時に「しまった!」というご夫婦もあるようです。今回の相談者は、社会人の2人のお子さんをもつYさんです。老後資金が不足するのではないでしょうか、とのご相談です。

子供が独立したら貯められる?

Yさん一家は、会社員のご主人(58歳)、2人の息子さん(27歳、23歳)、パート勤務のYさん(妻、53歳)の4人家族です。「老後は3,000万円必要らしい。」その情報を信じたYさんは、「夫が60歳になるまでに、退職金以外に1,500万円必要なのでは?」と心配になりました。現在の貯蓄額は500万円です。

Yさんの下のお子さんは、自宅から都内の私立大学に通っていましたが、今年から社会人です。Yさんは、次男さんが大学生になってからも、学費はご主人のボーナスをあてて、不足するときは貯蓄を取り崩していました。けれど、Yさんは、子どもたちが社会人になれば学費がかからなくなるから、と気にならなかったとおっしゃいます。

教育費はかからなくなったけれど……

4年前に長男さんは社会人になりましたが、現在も自宅から通勤しており、朝晩の食事はほとんど家族ととっていますし、ワイシャツネクタイなどの衣類や日用品も、ご主人のものと一緒にYさんが買っています。そのころ次男さんは大学生になったので、友達との外食費や交際費、サークルの活動費などは、アルバイトの収入を使っていましたが、学費や昼食代、定期代などはYさんが払っていました。

お子さんたちが成長してからも、つい世話を焼いてしまいます。長男さんにはお小遣いこそ渡していませんでしたが、食事の用意や衣類、日用品の買い置きなどはそれまでと変わりません。次男さんに毎月渡している昼食代や定期代は、高校生の時より多くかかります。

学費は、ボーナスの中からあてることとしていましたが、そのような生活が続いていますので、一部の学費と生活費は手取り収入ではまかなえず、貯蓄から毎月6万円補てんしていました。

お子さんも交えて話し合うことに

Yさんは、もしかしたら老後資金が足りなくなるかもしれないと、今年、次男さんも社会人になったのをきっかけに、思い切ってご主人に相談してみることにしました。

その時にYさんは、60歳以降も現在の会社に勤務することができるけれど、毎月の収入は7割ほどになるということを初めて知ったのです。ご主人は、家計について口出しすることはなく、今まで通り、Yさんに任せておけば大丈夫だろうと思っていましたし、住宅ローンの繰り上げ返済をしたいと考えていたのです。お互いに、もっと早く相談しておけばよかったと、とても反省されたそうです。

Yさんご家族の家計の内訳をお聞きすると、お子さんたちにかけるお金だけではなく、頻繁な外食費、まとめて支払っている通信費、見直すつもりでそのままになっている生命保険料、Yさんの交際費なども赤字の原因でした。そこで、見直し案をご提案し、お子さんたちを交えて、現在の貯蓄額や家計収支の状況、今後の収入の見通しなどを伝えて、生活費の削減について話し合っていただきました。

頑張りすぎず早目に老後資金を準備する

ご夫婦の年金額を確認していただいたところ、24万円です。年金生活を送る夫婦世帯の平均的な支出であれば、65歳から95歳までの生活費の不足額は1,100万円ほどになりますが、Yさんご夫婦は、住宅ローンの繰り上げ返済やリフォーム費用、また、介護が必要になったときの費用なども準備しておきたいところです。これからは、貯蓄を取り崩さず増やしていくと同時に、長く働くことで解決できる可能性があります。

いつまでもお金の使い方を変えられなければ、年金生活に入ってから、大変苦しい状況になってしまうでしょう。お子様も立派に成長されました。今からでも大丈夫です。改善するべく取り組んでいただきたいと思います。
 
文・藤原洋子
所属・FP dream代表
生命保険会社で営業職を経験し、AFP資格を取得。現在は、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、執筆、相談、セミナーを通して活動しています。
 

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