今回の『ブラッシュアップライフ』には、人生をループしてやり直すというSF的アイデアと、淡々としたリアルな日常を丁寧な芝居で見せるというバカリズムが得意とする作風がふんだんに盛り込まれている。

 面白いのは、この2つの要素が有機的に結びついていること。例えば、第1話の序盤で麻美たちが喋っている、ポケベルや公園前にあった公衆電話についての話は、初見ではどうでもいい世間話に聞こえるのだが、保育園の友達だった森山玲奈ちゃんのお父さんと保育園の先生の不倫を阻止しようとする際に麻美はその時の会話を思い出し、公衆電話からポケベルで「フリン シタラ バラス」とメッセージを送ることで、不倫によって玲奈の家族が離散することを阻止する。

 物語は現在3話まで終了しているが、1話冒頭で麻美が妹や友達としていた、一見どうでもいいやりとりに思える会話が、後から意味を成す場面が何度も描かれる。このミステリー的な構造は実に見事だ。

 人生をやり直した麻美が体験する90年代前半から現在(2023年)という時代の描き方も絶妙である。たとえば90年代後半なら、プリクラ、たまごっちといった、その世代を生きた人にはたまらない懐かしい小ネタが節々に挟み込まれているのも本作の面白さだ。