お笑い芸人として高い評価を受けているバカリズムだが、近年は映画やテレビドラマの脚本でも高い評価を受けている。彼のドラマの面白さは大きく分けて2つ。

 1つはSF的アイデア。例えば、出世作となった『素敵な選TAXI』(カンテレ・フジテレビ系)は、人生の分岐路に戻れるTAXIに乗った人々が、何度も人生をやり直す姿を描いたドラマだった。バカリズム脚本のドラマはどれも特殊な状況と選択肢が最初に提示され、そのルールの中でどうやって状況を攻略していくかを、主人公が考える姿が描かれる。これは「ゲーム的な物語」とも言い換えることができるだろう。

 もう1つの面白さは、自然な会話やあるあるネタを駆使した日常劇。その筆頭が、バカリズムがOLに扮して書いたBLOGを映像化した『架空OL日記』(日本テレビ系)だ。

 本作は銀行で働くOLたちの日常のやりとりを淡々と描き、自然な会話劇が高く評価された。ただ、本作の主人公のOL・升野を演じるのは、男性のバカリズム自身で、そのことについてドラマ内では言及されないため、ギャグともホラーとも取れる奇妙な違和感が常に漂っている。この奇妙な違和感も、バカリズム脚本の大きな特徴だ。