レゲエにビッグビート…ドラマーの“空席”が生んだ音楽性の拡張

 GLAYの正規メンバーにドラムはいない。4人組のバンドではあるが、編成はボーカル(TERU)、ギター(TAKURO・HISASHIの2名)、ベース(JIRO)である。ドラムは1995年以降、氷室京介やCHAGE and ASKA、西城秀樹などのバックを務めた名手Toshi Nagai(永井利光)が多くの楽曲でプレイしているのだが、この「テクニカルなサポートドラマー」の存在がバンドにもたらした影響は少なからずあるように思える。

 例えば「HOWEVER」は王道のバラードのように思われがちだが、Aメロのリズムにぜひ着目してほしい。当時「レゲエのリズムを取り入れた」とも評された【※2】、細かいゴーストノートが散りばめられている独特のシャッフルビートは、本曲に一般的なロックバラードに留まらない奥深さを付加しているように思える。
【※2…1997年の「ロッキンf」(立東社)レビュー(GLAY公式サイト glay.co.jp/news/list/4/53/?page=2 より)】

 それでいて、「neuromancer」(1996年のシングル「a Boy ~ずっと忘れない~」カップリング曲)や「嫉妬(KURID/PHANTOM mix)」(2001年のアルバム『ONE LOVE』収録)のような打ち込みビートのデジタルロック~ビッグビート方面の楽曲も並行してリリースしていけたのは、ドラマーが正規メンバーではないゆえに柔軟な選択肢を持てたからだろう。同時代に活躍したバンドである黒夢にも同じことが言えるが、正式メンバーとしてのドラマーが固定されなかったことは、結果的にGLAYがリリース毎にアレンジの幅・音楽性を大きく拡張し続けてくアシストになっていたのではないだろうか。