また、構成もスマートで気持ちがいい。1周目の人生で交わされていた仲良し3人組の会話に出ていた話題が、2周目の人生で見事に回収されたりする。人生の周回を越えた伏線回収。2周目の人生では幼少期に能力の出し惜しみをするみたいな点は、なんだか「人生何周もしてる人あるある」みたいでもあって笑ってしまう。なぜそれを「あるある」と思ってしまうのかはわからないが。
倫理学のテキストにある問いみたいなものにふいに直面する感じも面白い。人生2周目の麻美は、成人式が終わったあとに同級生たちとラウンドワンでカラオケをする。そこで福ちゃんこと福田俊介(染谷将太)は、みんなに「プロよりうまい」と歌声を褒められる。ミュージシャンになる夢を語っちゃったりする福ちゃん。だが、麻美は1周目の人生で、その後の福ちゃんが夢破れて地元に帰り、掛け持ちバイト生活を送っていることを知っている。この日、自分たちが無責任に福ちゃんの背中を押してしまったのではないか。ここで止めれば彼には別の人生があるのではないか。彼の人生を好転させれば自分も“徳”を積めるかもしれない。そう思った彼女は福ちゃんを説得しようとする。
が、麻美は説得を思いとどまる。地元に戻った福ちゃんがその後、バイト先の女性との間に子どもを授かり、父親としての人生を送っていることも知っているからだ。ここでミュージシャンとしての夢を止めてしまうと、その女性とも、子どもとも出会えない。そんなことをしてしまっていいのか。麻美は説得を思いとどまり、それほどうまくない福ちゃんの歌に手拍子を叩きはじめるのだった。