◆神の理想を体現する山下智久

 涙こそ出ないものの、哲学者キューマの全裸体にうっすらと清々しい感動を覚えるのは、山下の肉体自体が真実(理想)を体現しているからだと思う。

 キューマが一時退場したあと、アリスチームの一員タッタ(渡辺佑太朗)がキューマのことを「なんかいいやつそう」、「普通の人間に見えた」という台詞がすべてを言い当てている。ゼウスを主神とするギリシア神話の神々は人間の姿をしていて、人間とおなじように喜怒哀楽を持つ。人間はそんな神を身近に感じながら、この世界の真実を探求する。キューマはまさに神のような存在として描かれている。

 筆者は以前、『正直不動産』について書いたとき、山下扮する永瀬財地のことを天使だと形容した。天使が今度は神になる。キューマを演じる山下の一連の裸体ショットはサービスショットでもあるのだけれど、神の理想を体現する肉体美を持つ山下智久が素っ裸の単身で画面に登場することはどこまでも感動的で清々しい。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu