既婚・未婚問わず、就職して社会に出ると、お金の管理はたいてい親と別々になりますよね。「どの程度の資産や貯金があるかお互いに知らない」という親子も少なくはないでしょう。けれど、果たしてずっとそのままで良いのでしょうか?

今回は、明治安田総合研究所が行ったアンケート結果をもとに、親の財産管理についてリサーチ、親の入院や介護に関わるお金の問題についても考えてみました。

親の預貯金額を把握している50代は半数以下

2019年に発表された「財産管理に関する実態調査」によれば、親の預貯金額の状況を把握している人は、50代後半男性が37.6%、50代後半女性が40.1%です。50代後半の半数以上は、親がどのくらい貯金をしているか把握していないことが分かります。(※アンケートは55~79歳の男女が対象)

一方60代になると、親の預貯金を把握する人も増えてきますが、それでも60代後半の男性で63.7%、女性が50.5%です。なお、有価証券や保険といった預貯金以外の資産についても、把握しているのは60代後半でも全体の4~6割程度となっています。

親の生活資金や葬祭費は心配していない人が多い

次に「親の生活費や、亡くなったときの葬祭費用などをどの程度心配しているか」という質問の回答を見てみましょう。50代・60代ともに「心配している」「とても心配している」との回答は半数以下となっています。最も多い50代男性で、心配していると回答した人は全体の40%以下、いちばん少ない60代女性では全体の20%以下です。

ここで、最初に見た質問の回答とあわせて見てみましょう。例えば60代後半女性の場合、親の預貯金を把握しているのは約5割なのに対し、8割以上は親のお金について心配していないことが分かります。つまり、少なくとも全体の3割は、親の経済状況を知らないのに「大丈夫」だと考えているのです。もちろん、「いざとなれば自分のお金でサポートできる」という人も多いかもしれませんが、そうではなく、「大丈夫だろう」と楽観している人もなかにはいるでしょう。

親の財産管理のサポートは入院や施設入居を機に

続いて親の財産管理についての質問では、60代後半の男性で32.6%、女性で29.1%が「管理や管理の支援をしている」と答えています。財産管理を支援するようになった理由を見てみると、いちばん多いのが「親の入院または介護施設への入所・入居」という回答でした。

このことから、50代・60代の7割近くは親の財産管理に関わっておらず、親の入院や施設入居など特別なことがあって初めて、サポートを始める人が多いことが分かります。

かさむ医療費……親の資産だけでは足りないケースも

ここまで見てきたように、50代後半から60代になっても、親の資産状況を把握していない人は少なくありません。加えていざというときの資金についても、あまり心配していない人が多いようです。

ただし現実を見てみると、いざ親が入院や入居・入所となってそれが長引けば、親の資産だけでは費用をまかなえなくなる場合もあります。そうなれば、自分たちの貯金や収入のなかから費用を支払う必要があり、万が一支払えなくなれば、親子で共倒れとなるケースもあるようです。

老後の親子共倒れを防ぐには

老後に親子共倒れとならないためには、まず親の資産状況をきちんと把握したうえで、いざというときに、親の老後資金や年金だけで足りそうかを確認しておくことが大切です。もし親の老後資金が不十分であれば、資金面でのサポートをあらかじめ想定して、自分自身のマネーライフプランを考える必要があります。

ただし親とはいえ、「お金や毎月の生活費のことをストレートに聞くのは気が引ける」と感じる人もいるでしょう。そのような場合は、「この前、知り合いの親御さんが入院したらしいんだけど……」といったように、まずは世間話からの流れで軽く聞いてみてもいいかもしれません。

「うちは大丈夫」と安心しないで

親の入院や介護は、誰の身にもいずれ起こりうる問題です。いざそのときになって資金面で不安を抱えないためにも、親の資産状況を早いうちから知っておく必要があります。「うちは大丈夫だろう」と楽観しないで、親が元気なうちに、ぜひ少しずつでも話をしておきたいものですね。

文・西島さくら

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