ケネス・ブラナーやコリン・ファースら人気俳優たちが出演したテレビ映画『謀議』(2001年)も同じく「ヴァンゼー会議」をドラマ化したもので、ケネス・ブラナー演じるハイドリヒら親衛隊側に官僚たちが押し切られていく様子が描かれていた。本作では親衛隊側と官僚たちとの軋轢は控えめで、淡々と会議が進んでいく。こちらのほうが、より史実に近いのではないだろうか。
人類史上最もおぞましい会議についての再現ドラマと称したい。
ナチス政権下では、すでに1939年から「T4作戦」が実施されていた。身体や精神的な障害を持つ人たちを安楽死させようという政策だ。国家に対して有益な人間だけが生き残るべきだという「優生学」に基づいた考え方が、当時はドイツだけでなく世界中で広く支持されていた。
この優生学的考えを、より拡大解釈したのが「ユダヤ人問題の最終的解決」だった。ドイツだけでなく、ヨーロッパ中からユダヤ人を排除することで、アーリア人にとっての理想社会をつくろうとヒトラーは本気で考えた。ユダヤ人たちを強制移住させた「ゲットー」はすでに飽和状態となっており、占領国の担当官たちからもユダヤ人に対する早急な対応を求められていた。