この会議にはナチスドイツ総統であるアドルフ・ヒトラーは出席していない。ヒトラー、ヒムラーに次ぐNo.3の座に就いていたハイドリヒが議長を務め、かねてからの懸案事項だった「ユダヤ人問題の最終的解決」が議題として進められていく。ハイドリヒはすでに解決策を用意しており、内務省、法務省、外務省などを仕切る官僚たちの賛同を得るための集まりだった。

 会議中、虐殺(ジェノサイド)という表現はいっさい使われない。代わりに「特別処理」という言葉が使われる。ドイツ国内だけでなく、ヨーロッパ全土からユダヤ人を一掃するための方法が論じられる。会議には豪華なランチも用意されていた。会議の合間に美味しい食事を楽しみながら、全ユダヤ人の運命が決められていく。

 ハイドリヒは官僚たちを相手に、声を荒げることなく議事進行していく。ホロコーストを指揮することになるアドルフ・アイヒマン(ヨハネス・アルマイヤー)は議事録作成係として、ハイドリヒをサポートする。速記に追われる女性秘書(リリー・フィクナー)のために食事を取り分けておくなどの心遣いも、アイヒマンは忘れない。女性秘書は「楽しい職場です」と休憩時間に笑顔を見せる。

 16人の知的で紳士的なドイツ人たちが、理想の国家を実現するために穏やかにユダヤ人大量虐殺について語り合う。