◆夫の軽口が小さな傷に…
さらに夫がなにげなく口にする一言が、サトコさんをいちいちイラッとさせることも多い。
「たとえばですが、先日、シチューを作ったときのこと。サラダやお味噌汁もあったから箸は出ていたんです。でも先に食べようとした夫が『シチューも箸で食べるの?』と一言。スプーンがないよと言えばいいのに、どうしてそんな嫌らしい言い方をするのか……。思わずスプーンを夫の前に叩きつけてしまいました」
スプーンくらい自分で出せばいいのだ、家族の分も。それが夫にはできない。できないどころか、そういう嫌味な言い方をする。それがサトコさんの傷となる。
「夫は驚いて、冗談だったのにと。『ママ、怒りっぽいよな』と子どもに同意を求めるんです。それもまた私にはイラッとくる。こういうことの繰り返しなんですよね」
サトコさんが怒ったのを夫も感じたのだろう、その日は食後、珍しく「オレが皿を洗うよ」とキッチンに立った。だが皿を洗ったあと、「ふう、疲れた」を連発。あげく、「きみはお礼ひとつ言わないんだね」と言い出した。
「あなた、毎日、ご飯を作ってる私にお礼を言ってる? アイロンかけたシャツを着るとき、誰がアイロンかけたかわかってる? 思わずそう言ってしまったんですよね。すると夫は『だって、家事はきみの仕事でしょ』と。唖然(あぜん)としました。『家庭の一員である以上、あなたの仕事でもあるけど。もういい、わかった』と」
次女が不穏な空気を感じて泣き出したので、その場は言い合うのをやめた。だがそれ以来、夫とは素っ気ないやりとりが続いている。