役所広司と吉沢亮と渡り合う、演技初挑戦の若手俳優

 本作の目玉はやはり俳優陣の演技。堅物のようで弱々しさも見せる役所広司と、朗らかで時には全身全霊で喜びを表現する吉沢亮が、本当に固い絆で結ばれた親子のように映ることが大きな見所だ。

 さらなる注目はオーディションで選ばれた在日ブラジル人たちを演じる若手俳優で、吉沢亮の妻を演じるまらい果、鬼気迫る表情をするサガエルカスを筆頭に、それぞれが演技初挑戦とは思えないほどに達者だ。あまりに自然な存在感のため、それもまた「まるでドキュメンタリー」のように錯覚さえする理由だったのだ。

 さらに、登場するだけでホッと安心できるような役柄の佐藤浩一、怖すぎて一周回ってブラックコメディ的で笑えてくる松重豊、凶暴な悪役ながら複雑な内面を想像させるMIYAVIと、脇を固める俳優も豪華かつ完璧なキャスティング。それぞれが演じる役柄がどのように交錯し、物語に関わっていくのかも、楽しみにしてほしい。

 そして、静岡県磐田市で実際に活動するヒップホップグループ「GREEN KIDS」のFlight-Aことシマダアランも出演。彼は音楽での成功を夢見るものの、半グレとのトラブルに巻き込まれ窮地に陥る青年・ルイを演じている。Bezzyの記事でFlight-Aは「(半グレに絡まれるシーンは)似たようなことを実際に見てきた」「フラッシュバックするような感覚があった」などとも語っていた。