TVerは「日々訪れたくなるプラットフォームになる」になれるのか
右肩上がりで成長を続けるTVerは今や、世帯視聴率以上に注目される指標となりつつあるが、そのTVerが目指す先は「新たなチャンネル」かもしれない。昨年12月9日からは、MBSの制作によるTVer完全オリジナル番組『最強の時間割~若者に本気で伝えたい授業~』の独占無料配信をスタート。日経電子版などがスポンサーにつき、半年にわたって全24エピソードの配信が予定されている。また、TVer社の若生伸子社長は、目的型の視聴に留まらない「日々訪れたくなるプラットフォームになる」ことを目指すとしている。
ただ、課題はある。さんいん中央テレビの『かまいたちの掟』が2021年のTVerアワードで特別賞に輝くなど、ローカル局との取り組みも積極的に強化しており、レギュラー配信中の番組は500番組以上までに拡大されてはいるが、まだまだ未配信のものも少なくない。特にNHKは、2019年から「試行的な位置づけ」で一部の番組を配信してはいるが、本当にごくごく一部である。受信契約の確認を必要とする「NHKプラス」を促進することで受信契約者数を増やしたい狙いがあるものと見られるが(TVerでのNHKの番組視聴は受信契約の対象外)、NHKを含めた横断的な配信プラットフォームとなることをTVerに求める声は少なくないだろう。
収益面の問題はどうか。1月1日に放送された『あたらしいテレビ2023』(NHK総合)では、Twitterでの反響と視聴率が大きく乖離する番組の問題についても触れられていたが、なぜ視聴率が悪いのが問題視されるかといえば、視聴率が悪いとスポンサーからの出稿が鈍り、広告収入に直接関わってくるからだ。TVerで稼げればいいのだが、フジテレビの発表では、2022年度第1四半期(2022年4~6月)のCM売上高およそ400億2500万円に対し、無料配信による売上高は9.9億円にとどまっている。40分の1の規模なのだ。無料で見られるTVerは「再放送」扱いで、スポンサー料も割安になってしまうことが原因だとされている。