◆星野源やあいみょんですら紅白ハイライト動画が伸び悩み

 こうした傾向はアーティストの“足の早さ”につながります。たとえば、今回NHKがYou Tubeで配信するハイライト動画の再生回数を見ると、かつて大人気だったはずのアーティストがすでに飽きられている傾向がうかがえます。篠原涼子や映画『ONE PIECE FILM RED』のウタなどが100万回再生を超えているのに対して、バンドやシンガーソングライター系の置かれた状況はシビアです。

 星野源(※15万回)やあいみょん(※20万回)など、ほんの2、3年前には時代の寵児だった面々のパフォーマンスも特段話題にはならず、今回初出場を果たした緑黄色社会(※27万回)やSaucy Dog(※18万回)にもご祝儀的な瞬間最大風速すら吹かない状況になってしまっている。朝ドラ『舞いあがれ!』の主題歌「アイラブユー」を披露したback number(※14万回)も特別企画にしてはインパクトを残せませんでした。

 石川さゆりが「天城越え」と「津軽海峡・冬景色」を交互に歌わされてかわいそうなんて話がありますが、そもそも90年代以降のロック、ポップスにはそこまで認知されるだけの曲がないのですね。

 そんな中でもVaundy(※ソロで95万回、コラボで142万回)はかなり健闘しています。けれども、コスパとタイパのよい優秀な納入業者的な作風は、優秀であるがゆえにこれもまた耐用年数は短いのではないか。すぐに気持ちよくなれる曲は、すぐ飽きてしまうのですね。

※再生回数は記事執筆時点

◆アーティストの育成、熟成に時間をかけられなかった流れが今

 いずれにせよ、これはアーティストやファンの責任というより、あまりにもCDが売れすぎてしまった弊害と言うべきかもしれません。新曲を出せば売れる時代が長かったので、育てたり熟成させたりする時間がもったいなくなってしまった。いまその反動に苦しんでいるとすれば自然の流れなのでしょう。

 一方、動画再生回数を稼いだK-POP勢もあまり事情は変わらないのではないでしょうか。それは彼らのファンダムのパワーによるところが大きく、無関心な人たちは変わらず無関心のままという断絶は変わらないからです。