◆もはや紅白の耐用年数はとっくに過ぎている
それでも筆者は紅白にチャンネルを合わせていました。とりあえずつけておくにはちょうどいいのですね。大泉洋は適度に愉快だったし、橋本環奈は終始最適なテンションを保っていたので、見ていてストレスがかからない。あわただしい年末にあって助かる空気感でした。
その一方で考えてしまうのは、音楽番組として紅白がこれからも続くのかという点です。もちろん、あらゆる世代をテレビの前に釘付けにして等しく満足させるなんてことは端から無理でしょう。
ただし、それは当然としても、もはや紅白の耐用年数はとっくに過ぎているのではないか。
◆桑田、ユーミン以上の存在が出てこなかった音楽業界
今回40代から50代の年齢層をコアな視聴者としてシフトチェンジが行われたことは、出場歌手からも明らかです。演歌勢は大幅に減り、かわりに90年代、2000年代前半の大物アーティストの登場で話題を作ってきました。
こうした手法は目新しいものではなく、近年の紅白が“目玉”として特別枠を設けて盛り上げてきた方法を踏襲しています。その頂点が、桑田佳祐とユーミンの共演が実現した平成最後の第69回紅白だったことは言うまでもないでしょう。
では、今後も同じようなやり方が通用するのでしょうか? 筆者は厳しいと考えます。90年代以降、確かに音楽産業は大きくなりコンテンツの売上は伸びました。けれどもそれに比例してアーティストのスケールまでは大きくならなかった。簡単に言えば、桑田、ユーミン以上の存在が出てこなかったのです。
世代間のギャップを埋める器の大きなキャラクターのかわりに、スモールサークルで消費される“推し”が雨後の筍(たけのこ)のように出てくるビジネスモデルになってしまったからです。