9位 バブル
原作のないオリジナル企画のアニメ映画だ。先にはっきり申し上げておくと、本作の世間的な評判は芳しくない。(劇中にも批判的な物言いはあるのだが)主人公の少年にひたすらなつくヒロインのキャラクター性、やや強引に思えてしまう設定など、特に配信当初は厳しい声が寄せられていた。だが、美しくも退廃的な東京の街を舞台に「パルクール」で駆け抜けていく様は間違いなく一見の価値があり、劇場で公開されてからは迫力の映像と音楽とのシンクロを推す意見も多かった。
そして、筆者個人は、他のどこにも行けない、ここにしか居場所のない、「マイノリティー」たちの物語であることが大好きだ。聴覚過敏である主人公や、義足の青年を初め、彼らは何らかの欠落を抱えており、パルクールをすることでアイデンティティを保っているとも言える。コロナ禍で不自由さを感じていた人であれば、彼らの心情はより「ささる」のではないか。また、『響け! ユーフォニアム』などで知られる武田綾乃によるノベライズ版が、設定の考察や重要なエピソードなど、本編を補完する意味でも素晴らしい内容になっているので、合わせてぜひ読んでみてほしい。現在もNetflixで配信中だ。