ある日の朝食の写真を、鶴太郎は紹介してくれた。まず、目につくのはスイカや巨峰、シャインマスカット、メロンなどの果物だ。その横に並んでいるのは、黒豆酢、シナモンをかけた甘酒、キュウリとにんじんとアボガドを塩とオリーブオイルで和えたサラダ、玄米、オクラとトマトを入れた味噌汁、キュウリとにんじんのぬか漬け、なめたけなどだ。
意識の高すぎる朝ごはんである。当然だけれど、毎日おでんを食べているわけじゃなかった。冗談はさておき、まず気になったのは油気がまったくないことである。動物性のものもない。あと、現代栄養学の常識からしてタンパク質が圧倒的に足りていない。反面、糖質が多い気もする。
しかも、鶴太郎は昼夜に食事を摂らないらしい。おそらく、68歳のわりに老けている理由は、この粗食にある。彼はどこへ向かっているのか? たぶん、鶴太郎は霞を食べて仙人になろうとしている。芸人→芸術家→仙人という変遷を辿る、リアル鶴仙人。
徹子 「やっぱり、(睡眠は)空腹にしといたほうがいいんですかね?」
鶴太郎 「空腹にしといたほうが楽ですね。とにかく『寝る』っていうことは、自分が寝るというより内臓さんを休ませてあげたいと思って」
徹子 「話は違いますが、こないだ朝ドラにもお出になったんですよね?」
鶴太郎の朝食に興味がない様子の徹子。ぶった切って話題転換する、彼女のハンドル捌きも荒い。
今、鶴太郎は三線にハマっているそう。5年ほど前に盆栽を始めていたことは把握していたが、そこで筆者は情報が止まっていた。いよいよ、三線を始めていたとは。ボクシング、書、絵、陶芸、ヨガ、盆栽、三線……と、属性を足し続ける鶴太郎。ボクシングに入れ込んだあたりから、この人は自分自身にしか関心がなくなったように思える。
というわけで、鶴太郎が三線を奏でる動画が番組内で公開された。髪を後ろに流し、白髪で枯れた雰囲気の奏者が楽器を弾くその姿。もう、ほとんどトム・ヨークみたいなのだ。あと、ちょっとチバユウスケっぽくもあったし、100年後の常田大希みもある。『マネーの虎』(日本テレビ系)に出てきた“謙虚ライオン”小林敬社長にもちょっと似ていた。『バガボンド』(講談社)にこういうキャラが出てきた気もする。
三線の腕前は、正直言って趣味の域を出ていない。前述の通りミーハー心から始めた三線だから、あまり聴く者の魂には響かない。故・榊莫山氏から「これ書いた人は、えらい褒められたがってますなぁ」と自らの書を看破された過去が、鶴太郎にはある。彼の生み出す芸術は、その次元のものなのだ。でも、「褒められたい」という欲を貫き通す人生はうらやましくもある。
さらに、徹子の前で三線の生演奏を始めた鶴太郎。曲は、沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」だった。途中までは普通に歌っていたが、中盤からいろいろなものを入れ始める鶴太郎。
「ちょーちゅちょっちゅちょっちゅ ちょーちゅちょっちゅちょっちゅ、
たまごの親じゃ ピーヨコちゃんじゃ ぴ、ぴ、ピーヨコちゃんじゃ
アヒルじゃがぁがぁ」
「おーっばおっばおっば おーっばおっばおっば
小森の小森のおーっばおっばおっば おばけちゃまよー」
「わたしはね~ 手品をね~ やりたいと思ってるんですよー」
「わったしたちの国では そうですよ~
フランソワーズ・モレシャンですよ~ トイレにセボーン」
「ギ~ンギラギンにさりげなくぅー そいつがお~れの
黒柳さーん! マッチでぇ~す」
三線を弾きながら、ふざけ始める鶴太郎。獅子てんや・瀬戸わんやの「ぴっぴっピーヨコちゃんじゃ、アヒルじゃがぁがぁ」を歌いだしたときは「キタ━━━━!」と思ったし、それだけで終わらなかった。具志堅用高、小森のおばちゃま、浦辺粂子、フランソワーズ・モレシャンまで突き進み、本人の目の前で「黒柳さーん!」のマッチものまねで締めた、鶴太郎ギャグメドレー。ほとんど、これは彼の集大成だ。
「ひょっとして、番組が終わるまで三線を弾き続ける?」と期待させたが、なんにせよインパクトがあった。イケオジぶってたはずが、過去の持ちギャグを連発した鶴太郎。途中で、「誰か、鶴太郎におでんを押し付ければいいのに」とさえ筆者は思ってしまった。