◆カンテレは最後のユートピア?

佐野:(笑)カンテレの制作現場はいい意味でユルさがあるというか、現場の自由にさせてくれる最後のユートピアだと思います。

――恵那が、賛否のあった東京オリンピックについて「安倍首相は『福島について状況はコントロールされている』と述べました」「開催が決まって被災地の人たちも喜んでいます!」と盛り上げていた過去の自分を、自己嫌悪とともに思い出す場面。ヒリヒリしましたし、放送後は大きな反響がありましたよね。あそこもお咎(とが)めはナシで?

佐野:そうなんですよ。もしかしたら、私のところまで止める声が届くことはなくても、上の部長とかが守ってくれている可能性はありますが。

◆ピエロスイッチをバチンと入れる

佐野:それに、私は日頃からなるべく話しかけにくいキャラを作っているんですよ。できるだけ、自分が面白いと思った脚本をそのままの形で出せるようにという思いがあります。

エルピス 鈴木亮平
ホモソーシャルの頂点にいるような斎藤(鈴木亮平)に、恵那は惹かれてしまう(C)カンテレ
――周りに、嫌なおじさんとかホモソーシャル(男社会)な人がいると、今の佐野さんはどんな態度をとりますか。

佐野:もう、ホモソの人は、私みたいな人には近づいてこないですね。

でも、もっと年上の人からはマンスプレイニング(男性が、女性や子供を見下した自信過剰な態度で物事について説明すること)みたいなことはあります。そういうとき、私にはピエロスイッチがあるので、バチンとスイッチを入れて「へぇすごいですね」とキラキラした目で見る、という振る舞いをついしてしまいます。

その振る舞いが彼をさらにつけ上がらせているなと思うんですけど、いつかしっぺ返しを喰らうだろうから、今私がそれをする必要はないなと。人生の時間とか自分の使える力は限られているので、特にドラマ中はできるだけ余計なことはしないようにしています。