◆ほめられても「ひとつの指摘でクヨクヨする」

――SNSなどで大変な話題になっていますが、佐野さんは反響をどのようにご覧になっていますか。

佐野亜裕美(以下 佐野):私は日々反省がちな人間なので、反響に喜ぶ瞬間は性格上なくて、ほめてもらうと「なんかすみません」みたいな気持ちになってしまうんですね。

例えば、村井役の岡部たかしさんや、刑事・平川役の安井順平さんが記事になったり、スタッフや役者さんがみんなにほめられるのは嬉しいんです。でもドラマ全体で言うと、自分のプロデュースワークの拙(つたな)さのほうが気になってしまって。

――ご自身が考えるプロデュースワークの拙さというと?

佐野:例えば、「このシーンは別の芝居も試しておいたほうが良かったんじゃないか」とか、「もっとできたことがあったんじゃないか」とか……それを試したからといって良くなったかはわからない、答えのないことをグルグル考えてしまうんです。

そういう個人的な引っかかりの部分を、誰かに指摘されたりすると、「ですよね!」とか思ってしまって。仮に99の賛辞があったとしても、1の指摘をクヨクヨ気にしてしまう性格なんです。そういうところを直していかなきゃと、いつも(渡辺)あやさんから怒られるんですけど。

<物語の軸となるのは、犯人の死刑が確定した連続殺人事件。それを追いかけるのが、スキャンダルで看板ニュース番組を降板した女子アナ・浅川恵那(長澤)と、バラエティ番組の新人ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)のバディ(=相棒)だ。

拓朗は、ヘアメイクの大山さくら(三浦透子)にある弱みを握られたことから、連続殺人事件の冤罪疑惑を追うことになり、かつて冤罪事件を取材していた浅川を頼る。

序盤では、成り行きで巻き込まれた頼りないボンボン・拓朗を置き去りにし、恵那が「正しさ」に向かって一人突っ走ってしまう。しかし拓朗は、かつていじめに遭っていた親友を見殺しにした罪悪感を背負っており、同じあやまちを繰り返したくないという思いを強め、事件の真相解明にのめり込んでいく。>

◆登場人物のキャラクターは、どうやってできた?

――強さと繊細さのある恵那に対して、最初は拓朗の空気を読まない振る舞いが印象的でした。それは後に事件解決への大きなエネルギーとなっていきますが、こうしたキャラクターは佐野さんのご経験から生まれたものですか。

エルピス2
恵那(長澤まさみ)と拓郎(眞栄田郷敦)(C)カンテレ
佐野:キャラクターやストーリーを作る前にもちろんいろいろ打ち合わせはしますが、私が大きく担当したのは事件のプロットの部分で、それ以外には例えば女性アナウンサーは普段どんな生活をしているのかとか、具体的なキャラクター作りのためのリサーチやネタ提供をする程度なんですよ。

登場人物の性格について、私から「こうしてほしい」などと言ったことは何もなくて。そもそも台本打ち合わせの8割くらいは私のグチとか友人の話なんです。例えば「こんな上司がいて、こんなことを言われた」なんて話を、あやさんが住む島根に1ヶ月に1回くらい行って聞いてもらったり。それらがキャラクター作りの素地になっていったらしいです。